令和6年度 学校経営方針
昨年6月に「第4期教育振興基本計画」が閣議決定されました。目まぐるしく変化する社会で、持続可能な社会の創り手の育成、そして社会全体のウェルビーイングの向上がコンセプトとして掲げられ、5つの基本的方針と16の目標が定められました。その背景には将来の予測が困難な「VUCA」の時代、少子化・人口減少・高齢化の進展、地球規模の課題の増大、国際的にみて低い労働生産性、学ばない社会人の増加、国や社会に対する意識の低下などがあげられています。
国外に目を向けると、経済協力開発機構(OECD)では「教育」や「学び」について国を超えて問題意識を共有して意見を交わし合い、国際的な視点をもって考える「Future of Education and Skills 2030project」が立ち上がっています。そのプロジェクトの中で最も重要な概念となるのが「Student Agency(生徒エージェンシー)」です。Agencyとは、主体的に考え、行動し、責任をもって社会変革を実現していく意思や姿勢を意味します。その原点となったのが、平成23年の東日本大震災後に支援に入ったOECDスタッフが目の当たりにした現地の子供たちの様子でした。社会や暮らしの枠組みを一からつくり直さなければならないという状況の中で、日本の子供たちは主体性を発揮し、責任をもって新しい生活の創造に貢献していたのです。その姿から、子供たち自身が「受動的な学習者」から「能動的な創り手」へと変わらなければならないことを強く感じたといいます。
このような情勢を見てみると、キーワードは「社会の創り手の育成」のようです。よく、日本の子供たちは社会の形成に主体的に参画する意識が低いことが指摘されます。これからの社会を持続的に発展させていく創り手を育成するために、中学校現場としてどのような教育を進めていく必要があるのでしょうか。教職員はもちろん、保護者や地域の方々とともに、じっくりと考えながら進めていきたいと思います。
さて、雄大な自然に恵まれた直入中学校では、季節ごとに表情を変える景観の中で、全校34名の生徒たちはのびのびと中学校生活を送っています。小学校時代からメンバーはほとんど変わることなく、互いの状況や性格をよく知った中で、諸活動や学習に意欲的に取り組んでいます。一人一人は明るく素直で、挨拶もよくできます。一方で、それゆえの課題もあり、教職員で共通理解し解決方法を探りながら教育活動を進めてきました。本校における課題が卒業後に及ぼす影響を考えると、これからも卒業後の生活において自分の力で自己実現を目指すことができる力を付させたいと考えています。
そこで、今年度も学校の教育目標を「自分に問い、学び合い、自己実現を図る生徒の育成」と定めて、生徒が学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくとともに、持続可能な社会の創り手としての人材となるよう、学校の教育活動全体を通してキャリア教育の充実を推進していきたいと考えています。
自分に問い、学び合い、自己実現を図る生徒の育成
⑴ 生徒と共に汗を流し、共に感動を味わえるよう工夫を凝らした教育活動に取り組む。
⑵ 郷土を誇り、愛するとともに、社会の激しい変化に流されることなく、自分の未来を自立的に切り拓いて生きていくために様々な課題に柔軟かつたくましく対応する力と態度を身に付けた生徒を育成する。
⑶ 一人一人の生徒の実態を的確に把握し、心の結びつきを基調とした生徒指導、学年・学級経営に努める。
⑷ 一貫性のある活気あふれる学校づくりを目指し、学校運営組織が活性化するように、学年・分掌が機能的・能動的な組織となるよう全職員で協働する。
⑸ 教職員一人一人が、新たな時代にふさわしい資質・能力を備える必要性を理解し、積極的に研修に努めるとともに、校内研修の効果的な推進に努める。
⑹ 生徒、保護者との信頼関係をいっそう深め、家庭や地域との連携を強めることで、教育目標の具現化に努める。
⑺ 指導を通して育成を目指す資質・能力を明確にし、教育課程の編成についての基本的な方針を家庭や地域と共有する。